歪みのMRI

歪みのMRI

拡散強調画像で水移動を伴う組織歪みを観測する

拡散強調画像はreforcusingのためのπパルス(180°)の両側にMPG(motiono proving gradinet)パルスを配置して、水のバルクフローでは信号が低下しないが、拡散のような水分子のinchoherent(自己相関のない動き)で信号が減少することで、拡散速度によってMRIコントラスを付ける手法である。この画像をdiffusion weighted image (DWI)と呼んでいる。

組織が歪むときにinchoherentな水移動が生じると仮定すると、その水移動の十分の移動量と拡散時間内にその移動が生じる場合、DWI(拡散強調画像)で捉えらることができると考えることができる。

IVIMによるDWIの信号低下

拡散はランダムに進行方向を変える分子の運動であり、このため上図の2つの傾斜磁場パルスでボクセル内のプロトンの磁化の位相が異なる磁場を受けることで位相ずれが生じ、MRIの信号が低下することに起因する。一方、生体組織では毛細血管などの血流もボクセル内のランダムな水の動きとなり、同様に信号低下に繋がる。これは血管と血管、血管と組織内の水の動きのchohelentが失われるためであり、Le Be harnによりinchoherent motionと呼ばれ、intravoxel inchoherent motion = IVIMと名付けられた(D Le Bihan, 1986 Radiology)。

組織の歪みにおけるIVIM

組織が歪むときには、水移動を伴わない歪みでもIVIMが達成され、DWIの信号低下を招く。下の図で青い四角がMRIのボクセルであり、黒丸が水分子を表している。四角の中でinchoherentな水分子の移動が生じるとDWIの信号が低下が生じると考えられる。

しかし、組織が歪むときにもし、組織内の水が異動するとより大きなIVIM効果を生むと考えられる。骨格筋の収縮時にDWI信号が欠如することを2006年にISMRMで報告した。その理論的な背景は未確定である。骨格筋の収縮時シミレーションで組織外への水移動が生じることが報告されている(Suraj Shankar, 2023, Nature)。

 骨格筋を通電収縮させたとき、sagital phase contrast MRI(右)の画像から組織の収縮が計算できる。一方、axial DWI(左)ではPC (phase contrast) MRIで収縮速度を計測した。収縮している筋ではDWIで信号低下が認められる。

この減少にはいくつかの報告があります。OSMGを利用することで、動きのアーチファクトを減少させることができるなどもあります(Mazzoli V, Front Neurol 2021)。

 この効果は動きによるDWI信号低下を抑制するbipolar MPGを用いたシーケンスでは著しく低下することがわかっている。

 さらに他動的に変形させた場合でもどうようにDWIの信号が低下し、ADC (apparent diffusion constant)の低下が認められる。

下図は外圧でピストンを4.8mm/sの速度で筋に押し込む装置のシェーマである。

この変形時に観測されたADCは安静時のADCに対して早く、その高いADCを示す領域は筋構造に関連しているように見える。(領域A=1.78×10-3mm2/s, B=7.32 x 10-3mm2/s, C=1.58 x 10-3mm2/s)

DWIで信号が欠如する他の組織として心筋、肝左様が報告されている。肝左様も心臓の動きに対して信号の欠如が報告されており、心拍に同期してDWIの信号欠如が心拡張に最大低下を示す。TDはR波からの遅延時間であり、220ms付近で最大の信号低下を示した。最大拡張のタイミングは300ms程度であるが220msは変形速度が大きい時点かもしれない。

心筋についても収縮時にIVIM効果があるとするとかなり大きな効果となると考えられる。心筋梗塞では心筋の変形が小さくなることが予想される。2009年に遅延造影で描出された領域が、DWIで高信号に描出されたことが報告されている(Satoshi Okayama, 2009, nternational Journal of Cardiology) 。しかしその後の報告はない。

bipolar gradient pulse sequenceを用いて心筋拡張期の心筋のADCを計測するとstrain imageで得られる結果と似た、左心室の不均一な筋収縮が観測された。